2004年度最も印象に残るニュースについて

世相を象徴する「今年の漢字」は、「災」が選ばれた。台風や新潟県中越地震、イラクでの人質殺害など多くの天災、人災を反映したものである。しかし、様々なニュースの中で、最も自分の身近に起きたことは災難ではなく、むしろ斬新的なことといえる。それは法科大学院の開校である。

法科大学院の成立は、司法制度改革の一環である。日本は事前規制・調整型社会から事後チェック・救済型社会に変化し、それとともに、司法の役割は増大していく。法曹に対する需要が高まりつづけ、法曹人口を拡大する必要があるが、従来の法学部教育ないし司法試験制度の下ではせいぜい毎年千人くらいで、その需要は満たされない。したがって、新たな法曹養成制度を考案せざるをえない。法科大学院はこのような法曹の人的基盤を確立するためのものである。今年の四月から、日本全国の法科大学院六十八校が学生を受け入れはじめた。私の在学している北海道大学もその一つであり、かつ北海道内唯一の法科大学院である。一学年の定員は百人であり、開校を向けて、法学部は一・二階の教室を法科大学院用に改装した。さらに、法学研究科の修士課程は再編・縮小された。法学部の小さな建物の中で百人が増え、人の出入りが激しくなっているが、時々講堂の外を通ると、法科大学院学生のまじめな勉強姿が目に付く。

法科大学院は法曹の養成を目標とするものであり、外国人留学生のわれわれには本来無縁である。しかし、法科大学院ないし日本の司法改革は私にとっては重要な関心事である。なぜなら、台湾も1999年から司法改革の措置を展開しているからである。その中で、法曹の選抜試験に関する変革が含まれており、すなわち、従来弁護士資格の試験は、裁判官・検察官の試験と分かれていたが、2005年度からは日本と同じく一つの試験にまとめる予定である。そもそも、台湾における司法改革は、ポイントが必ずしも日本と同様ではない。台湾の議論は訴訟制度及び法曹人事改革に重点をおいており、法曹養成過程に関しては根本的な問いはまだ出されていない。ただ、全国司法改革会議における臨時提案では、現行の法曹養成教育を担う法学院(日本の法学部に相当)の組織改革と弁護士試験の合格者数の増加という話も出ている。この提案内容は日本の司法改革に類似した部分がある。おそらく、日本の改革は台湾でも注目されているのであろう。

法科大学院は新たな制度であり、将来の新司法試験がどのくらいの合格人数を増やし、円滑に法学大学院で育った人材の受け皿になるかはまだ不明である。画期的な改革であるため、今後の進展を観察しつづけたい。そして、この改革の成果が台湾に若干の示唆を与えることを大いに期待している。

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